《ことこと倶楽部》とは

実施団体「邦楽舎ほうらくしゃ」について

 《ことこと倶楽部》を運営しているのは、「邦楽舎」、関西を拠点に活動する邦楽 (地歌筝曲・三味線・尺八)演奏家、作曲家、邦楽器製作者、わらべ歌遊びの指導者、日本音楽研究者が、日本の音楽文化をこどもたちに伝えるために立ち上げた指導者集団です。各指導者がそれぞれの専門分野からこどもと真っ向から向き合い、こどもとの関わりを互いに共有しつつ、日本音楽の伝承と指導を試みています。

活動の場と参加するこどもたち

 堺市の泉北ニュータウンに位置する「こひつじ保育園」のホールをお借りして、月に2回(計18回)実施しています。地域社会に根を張る保育園での活動には、地域のこども、卒園したこどもが集まってきています。対象は小学生から中学生まで。18年度は18名、19年度は28名が参加しています。こひつじ保育園の近くに暮らすこどもや、こひつじ保育園で0歳から就学前までの6年間を共に過ごした卒園児たちが多くやってきます。多くが地域(小学校校区)での仲間、在園時からの仲間として《ことこと倶楽部》に参加していること、兄弟姉妹での参加も多いことが特色です。
 会場となるこひつじ保育園では、園の保育方針として「縦割り保育(異年齢保育)」を実践しています。特に卒園児の場合は、赤ちゃんの時から一緒に生活したり遊んだりしてきた異年齢の仲間がそのまま《ことこと倶楽部》にいるわけで、その人間関係がそのまま《ことこと倶楽部》での活動に引き継がれていることになります。このような異年齢の人間関係が、昔のこども社会のあり方を再生させたいという邦楽舎の活動の、大切な「場」となっています。また、地域やこどもたちの保護者のみなさん、また、こひつじ保育園の保育士さんの協力にも多くを支えられています。

活動の内容とその特色~わらべ歌遊びの導入~

  • わらべ歌遊びには「こどもの社会」があります。大きい子が小さい子に教えながら遊ぶ伝承のかたち、遊びのルール、役交代・鬼決めのルールを通して、こどもたちは社会性を培います。
  • 伝承的な遊びの文化…お手玉、あやとり、絵かき歌、おはじき、縄跳び、まりつき、羽子板遊び、など。遊びを通して、実は昔のこどもたちは体のバランス、心のバランスを養ってきたのです。《ことこと倶楽部》では、たくさんの伝承遊びでおとなもこどもも遊びます。
  • わらべ歌遊びには、おじいちゃんやおばあちゃんの出番があります。《ことこと倶楽部》で覚えたわらべ歌をこどもたちが家に帰って口ずさむと、おじいちゃんやおばあちゃんがご自分たちがこどもだったころに歌った歌を思い出して、教えてくださることがあります。実はそれこそ、わらべ歌本来の伝承ルートなのです。おばあちゃんが歌ったのはこんな歌だったよ、こんな遊びだったよ、というところから、本来の文化の伝承が始まります。《ことこと倶楽部》はそういう伝え方を大切にしています。
  • わらべ歌は、西洋音楽のドレミではなく、昔からの日本音楽の音階でできています。わらべ歌は、そのままお箏や三味線といった日本音楽へとつながっていきます。
  • もっと「ことば」で遊びましょう。「あいことば」で遊んでみましょう。
  • 《ことこと倶楽部》では、テレビから流れる全国共通のわらべ歌ではなく、関西弁の、こどもたちが日常しゃべっていることばのわらべ歌にこだわっています。
  • そして「ことば」から「うた」へ、「うた」から「箏(こと)うた」へと、自然にこどもたちを導くことが大切だと考えています。
  • わらべ歌遊びでは、こどもたちはいちばん自然な発声で歌います。
  • 遊びを通して心で覚えたわらべ歌の旋律だからこそ、こどもたちはすぐに邦楽器で弾けます(吹けます)。
  • こどもたちがほんとうの邦楽の音に出会う、よい演奏に出会う、本物の楽器に出会うために、《ことこと倶楽部》の指導者が一流の演奏をこどもたちに聴かせています。
  • 邦楽器の職人がこどもたちの声に合った調弦(音域)を工夫し、こどもたちのからだに合った楽器(一尺三寸の塩ビ尺八、短棹の三味線など)を改良製作して与えています。
  • こどもたちは、「遊び」と「お稽古」のけじめを学んでいます。
  • 年上のこどもが年下のこどもにわらべ歌遊びを教えていきます。
  • 「うた」を作ってみましょう。自分の気持ちを「うた」にして歌ってみましょう。
  • 邦楽器につながる日本の音を見つけましょう。木の音、風の音などに気づき、見つけて遊んでみましょう。

《ことこと倶楽部》が願うこと

  • いつも一緒に遊べる「仲間」がいて、楽しい「遊び」と「うた」があること。
  • おじいちゃんやおばあちゃんも時々やって来て、歌や遊びを教えてくれるといいな。
  • 邦楽のおっしょはん(師匠)がすぐそばにいてくれて、いつも邦楽器の良い音が身近に聴こえています。
  • なぜか、そんな「うた」、そんな「音色」、そんな「居場所」が、楽しくて“懐かしくて”心地よい、《ことこと倶楽部》がそんな場所でありますように。